Weekly Report
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「楽しもうロータリー!ファインコミュニケーションで」
東京六本木ロータリークラブ会長
令和5年2月6日発行 第738号
2022・2023年度 No.24
卓話『経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント』
NPO法人J-Win 会長理事 内永 ゆか子様
場所:グランドハイアット東京
ご略歴
1971年に日本IBMに入社。同社で初の女性取締役に就任、常務取締役、取締役専務執行役兼IBM Vice President of APTOなどを歴任。2007年よりNPO法人J-Win理事長として、企業におけるダイバーシティ・マネージメントの支援に尽力。2008年ベネッセコーポレーション取締役副会長、ベルリッツコーポレーション代表取締役会長兼社長兼CEOなどを歴任。2022年7月よりNPO法人J-Win会長理事に就任。
著書に「部下を好きになってください」(勁草書房)など。
クラブからのお知らせ令和5年1月30日
会長挨拶
こんにちは。一月最後の例会です。冷えますね。体調管理に注意しましょう。今日も特にわたしからの報告はございません。
今日はAKAITOの伊藤様に卓話で国産のサフランのお話をして頂きますが、そのAKAITOファンダーであるフォードさんから私たちのLUNCHメニューのためにサフランをご提供頂きました。グランドハイアット東京のシェフがそのサフランをふんだんに使ったお料理を創作してくださっています。
伊藤様の卓話のプロローグとして、各テーブルでサフランのお味や香りのことを話題にしながら、召し上がってください。今日の例会も素敵な時間になりますように。
(記:今村会長)
幹事報告
本日の幹事報告は2つです。
- 現在、理事会等におきまして当クラブの定款・細則の見直し作業を行っております。5月22日クラブ協議会において新定款・細則を会員に提示する予定でおります。先日、BOXに配布させて頂きました日程表にはそのことが記載されておりません。同日は卓話は行わずクラブ協議会となる予定ですので宜しくお願い致します。更新したスケジュールは他の予定も確定次第、配布させて頂きます。
- 「抜萃のつゞり」を皆様のBOXに配布させて頂きました。昨年の書籍や雑誌、新聞から心に残る文章・記事を抜粋し、まとめた書物です。東京ロータリークラブの会員である熊平雅人さんからのご寄付です。ご確認ください。
(記:谷口幹事)
卓話『人の心に寄り添う公共政策』令和5年1月23日
大妻女子大学特任教授 翁 邦雄様
人間はすべての利用可能な情報を利用して合理的に自分の利益を最大化するように行動すると仮定しています。まともに考えるとスーパーコンピューター並みの計算能力が必要になるわけですが、有名な経済学者であったミルトン・フリードマンは「ビリヤードで球を突くことは、物理学的には非常に高度な計算だ。でもそんなことを考えずに球を当てる。人間は同じように合理的な計算をしているはずである。」と言いました。これが伝統的なミクロ経済学の考え方です。
しかしどう考えても合理性だけでは人間行動の理解に偏りや歪みがでてきます。もう一つの考え方は行動経済学者的な理解です。ダン・アリエリーは「本当に賢い人達は自らの非合理性を認識して対処する」と言っています。本日は人間の行動の利己的合理性からの一貫したズレとその政策的応用を中心にお話をしたいと思います。
人間はどうして合理性から外れるのか。それを考える足掛かりとして、1720年に起きた英国の南海泡沫事件のときのエピソードを紹介したいと思います。この事件は、南海会社という会社の株式が爆発的な人気を集めたことをきっかけにした大バブルの発生と崩壊ですが、有名な物理学者のアイザック・ニュートンは、このとき、一旦は大儲けをしたあと後に大損をしてしまいました。明らかにニュートンは合理的な計算にたけた人です。それなのになぜ合理的な損切り(値段が下がった時に損を確定させてそれ以上拡大させない行動)ができなかったのか。
行動経済学では、人間には損失の痛みのほうが利益の喜びより倍以上大きく、損を確定させてしまうことに心理的な強い抵抗が働く、という特徴があることが知られています。これがニュートンに損切りを躊躇わせた一因、と考えられます。この損失と利益の心理的非対称性は、金銭的な問題に限りません。利益と損失の見方は基準になる点の置き方によって変わります。損失と利益の分岐基準となる点を参照点(リファレンスポイント)といい、それによってある出来事に対する人間の受け止め方が大きく変わってくるわけです。よって、リファレンスポイントをどこに設定するかということは、政策的応用に当たっても非常に重要になってきます。
ところで、なぜ人間には合理的判断と非合理性が混在するのでしょうか。行動経済学者は、人間は、スピーディーかつ直感的に反応し、「ヒューリスティック」と呼ばれる速断法を採用している直観的判断システムと、緻密な合理的計算を行う判断システムを行き来している、と考えています。ヒューリスティックには、典型例に引きずられる代表性ヒューリスティック、思いつきやすい利用可能性ヒューリスティック、最初に与えられた情報にこだわる固着性ヒューリスティックなど、様々な種類があります。
代表性ヒューリスティックの有名な例として行動経済学者カーネマンが作った「リンダ問題」の例をみましょう。
リンダは31歳独身で、非常に聡明ではっきりものを言い、大学では哲学を専攻して、学生時代は人種差別や社会正義の問題に関心を持ち、反核デモにも参加していた。リンダは現在銀行員か、銀行員で女性解放運動家か、どちらの可能性が高いと思いますか。
大抵の人は「リンダは銀行員で女性解放運動家」と答えてしまいます。しかしそれは間違いです。銀行員の中で女性解放運動家という特性を持っている人はごく一部に過ぎず、銀行員の部分集合ですから、銀行員である確率のほうが確実に大きいのです。しかしリンダの人格の代表性に引きずられて間違った選択をしてしまうのです。
ヒューリスティックの利用以外にも、認知バイアスと呼ばれる心理特性もあります。自分に都合のいい状況だけを重視してしまう確証バイアス、どうしたって取り戻せないコストを「もったいない」と思うことで判断が歪められるサンクコストバイアス、異常事態でも過剰反応を避けるために無視してしまう正常性バイアスなどです。
人間の持っている色々な歪みや特性は教育を受けるに従って消え、より合理的になるかというと必ずしもそうではありません。心理学者による研究では、幼子のほうが大人よりもサンクコストに囚われない正しい判断ができることが知られています。人間は生育過程で家庭でも学校でも「もったいない」という教育を受け、それが意識に浸透する結果、取り戻しようがないサンクコストにも引きずられるような行動をとってしまう、というのが心理学者の主張です。
また、正常性バイアスについては、些細な異常は周囲で毎日起こっているため、とりあえず異常は無視する傾向です。実際、災害の犠牲者は正常性バイアスによる逃げ遅れが圧倒的に多く、危険をなかなか自分自身の問題として受け止められまいまま、命を落とす事例が多いことが判明しています。
こうした人間の判断のさまざまな傾向は、企業のマーケティングや公共機関のソーシャル・マーケティングにしばしば応用されています。表現のしかたによって人間の判断が非常に大きく変化することを利用した「フレーミング」の技術はしばしば応用されているものの一例です。同じことを伝えるにしても、どう表現するか(フレーミング)は非常に大切です。例えば2020年4月に新型コロナ対策専門家会議から「コロナの感染を防止するための10のポイント」が発表されています。これをみると例えば、「ビデオ通話でオンライン帰省」などどのポイントについても推奨行動がポジティブに表現されています。帰省しないよりオンライン帰省はプラスです。同じことを「帰省しないでビデオ通話」というと帰省より魅力のないビデオ帰省を推奨、ということになり、損失を意識させます。そうなってしまわないようにリファレンスポイントを工夫していることになります。また専門家会議は、若者に対しては、「あなたの大事な人の命を守るために」と利他性を強調した呼びかけをしました。人間の利他性に働きかけることも非常に効果的な手法だということが知られています。
課税や補助金、規制を使わずに、強いることなく人々の行動を所期の方向に持っていくような行動経済学的な手法を「ナッジ」といいます。ナッジの概念のわかりやすい例として、アムステルダムのスキポール空港のトイレの例が挙げられます。このトイレは、小便器の真ん中に小さなハエの絵を描いてあります。それだけで、強制も罰金も使わず人々の自発的行動でトイレが劇的にきれいに使われるようになりました。
ナッジは「人の背中をそっと押す」というニュアンスです。ナッジの大きな問題はこの手法が、目的の善悪にかかわらず使える、という点にあります。この卓話のタイトルは「人の心に寄り添う公共政策」としましたが、悪い働きかけが忍び込んでしまう、という可能性もある、ということです。したがって、少なくとも公共政策としてナッジを使う時の大前提は「透明性」であり、ナッジを設計する人の利害なども明らかにしておく必要があります。
企業のマーケティングやミクロ的な政策分野に比べ、金融政策や財政政策などのマクロ経済政策は、分野として行動経済学的知見の利用は立ち遅れています。例えば、インフレは国民にとってポジティブな現象かというと、そうではありません。デフレ脱却が叫ばれていた2013年当時も国民はインフレを少しも待望していませんでした。それでも、日銀は異次元緩和で国民の持つインフレの確率的予想値に強引に働きかけインフレ目標を達成しようとしました。しかし、アンケートをみると、日銀のインフレ目標への国民の関心は全く高まらず、異次元緩和は空振りに終わりました。
ただ、インフレへの関心が高まらない、ということは、本来は悪いことではありません。関心を持つということはおおむね心配につながるからです。アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会の議長であったグリーンスパンは、「物価安定は、人々が物価に無関心な状態を実現すること」と定義しました。異次元緩和は行動経済学的な知見を無視したことで所期の成果を挙げそこなったのですが、国民が無関心だったという意味では物価安定は壊さなかったのかもしれません。
ご清聴ありがとうございました。
ニコニコBOX情報
西RC 久保 弘憲さん
本日はお世話になります。皆様の益々のご活躍をお祈り致します。
安部 義彦さん
伊藤嘉紀さまのサフランの卓話楽しみにしておりました。よろしくお願いいたします。フォード・マーク・リーさんウェルカムバック!
堀井 健一さん
4月のワイン会楽しみです。ニコニコ。
池田 泰義さん
伊藤嘉紀様本日の卓話とてもたのしみにしています。よろしくお願い致します。
今村 道子さん
冷えますね。今日はAKAITOの伊藤様のお話とても楽しみです。よろしくお願いします!!
小篠 ゆまさん
伊藤様、本日の卓話大変楽しみに致しております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
宮永 雅好さん
コロナもすっかり人間社会に溶け込んでしまい、普段の日常が戻りつつありますね。皆さん日々の健康に気をつけていきましょう
中島 信二さん
ワイン同窓会を再開します。ご参加よろしくお願いします。
大橋 裕治さん
伊藤嘉紀様、本日の卓話ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
鈴木 聡子さん
寒い日が続いていますが皆さまおかぜなど召しませんよう。
高倉 太郎さん
もう1月が終わってしまいますね。時が経つのは早いです。
鳥居 正男さん
春が待ち遠しいですが、もう少しの辛抱です。健康管理しっかりやりましょう。
1月30日のお食事

1月30日の例会出席率(暫定)
- 会員の例会出席数(出席率) 34名(67%)
- ゲスト・ビジターの参加者数 6名
※メーキャップを含めていない暫定の人数です。
次回のプログラム
令和5年2月13日
卓話『日英関係等について』
駐日英国大使 ジュリア・ロングボトム様
場所:グランドハイアット東京